もう7年ほど前の話ですが、2日間、母校の和歌山大学で、学生向けにM&Aの講義をしたことがあります。
私が学生の頃は、女子学生が1割くらいでしたが、講義には4割くらい女子学生が参加してくれたので、時代も変わったなというのが第一印象でした。
講義後にレポートの提出がありその採点をしたので、現役学生のM&Aに対する素直な考えを知ることができました。
レポート提出は約400人だったので採点が大変でした(T_T)
まず、ほとんどの学生が当初M&Aに対して間違った考えを持っていたことが分かりました。どのタイミングでこういう考えを持ったのか分かりませんが、M&A=敵対的M&A(お金を持つものが力ずくで会社を乗っ取る)というイメージでした。
実際、敵対的M&Aは全体の1%もないのですが、マスコミ報道が国民のイメージ形成に間違った影響を及ぼすという怖い一面を感じました。
次に私の講義を聞いた後は、ほとんどの学生がM&Aに肯定的な考えになったことがレポートの採点を通じて分かりました。
レポートは、次の2つのテーマから選択してもらうことにしました。
1.中小企業のM&A(後継者問題解決のために)
2.2代目の決断(会社を継ぐべきか否か)
これらのうち約6割の学生が1のテーマを選択し、約4割の学生が2のテーマを選択しました。
2のテーマを選択した学生のうち無条件に会社を継ぐべきと答えたのはたった3名しかいませんでした。条件付で会社を継ぐべきと答えたのは約1割で、意外にもほとんどの学生が社長の子供は会社を継ぐべきではないとの回答でした。
(会社を継ぐべきと答えた理由)
・せっかく父が作った会社を他人の手に渡すのはもったいない
・会社を継ぐのは2代目の使命
・会社の業績が良くて、2代目も興味を持つなら、おそらく英才教育を受けているので将来の社長にふさわしい
等
(会社を継ぐべきではないと答えた理由)
・社長の子供が会社を継がない方が優秀な社員が集まる
・子供が社長以上にやる気と能力があるケースは少なく、2代目は甘やかされていることが多い
・2代目には、2代目の時代にふさわしい人生を選択してほしい
・友達に将来会社を継ぐことになっている人がいるが、彼は全然勉強をしていない。そんな彼が会社を継いだらきっと会社を潰すと思う
等
今から30年前は、「親の会社を子供が継ぐべきか否か?」という質問をしたなら、おそらく8割以上が継ぐべきという回答をしたと思います。
これは、一言でいうと昔は継ぐのが当たり前の時代だったからです。それに比べて現代は、どんどんIT化が進み、海外ビジネスも容易になって、がんばった人の可能性が昔以上に広がり、選択肢もどんどん広がっています。(ただし、選択肢が多すぎるため、何をしたいのか分からないという人も増えていると思います)
少子化に歯止めが掛からず、家族意識の希薄化が進んでいる状況も学生からM&Aという選択肢に賛同してもらえる要因になっていると思います。
私は、子供が会社を継ぐことに関しては条件付で賛成です。
その条件とは、子供が社長である親以上にやる気があり、その業種が好きであり、よく他人の話に耳を傾け、現代にふさわしい自分流の経営を取り入れ、世代交代時によくある社内の軋轢を強い意志で乗り越えるパワーがあることです。
これだけの条件を揃えた子供を育てることができれば社長も安心ですが、会社経営に全力集中しながら子供に2代目教育ができている事例は少ないのです。
自分以上に優秀な子供に会社を継いでもらえる社長は最高に幸せです(*^_^*)