三重県にある大手電機メーカー(M社)の下請けの案件(シャフトの切削業)を仲介したときのお話しです。
M&Aでは、どんなに簡単そうに思える案件でも必ず1度や2度は、交渉が決裂しそうになる場面があるのですが、この案件では全くそういうことはなくスムーズに成約できました。
その原因を考えてみると次のようなことが挙げられます。
・下請けながら売り手の業績が良かったこと(年商4億円、経常利益1億円)
・買い手(年商10億円、工場機械の設置・移設業、人材派遣業等)は、元請けのM社に対してコネがあり、M&A後、突然取引が切られる心配がないこと
・譲渡希望金額が比較的安かったこと
・買い手のグループ企業を使うことにより更なる利益アップが図れること(営業先の確保、運送会社の共通化によるコスト削減、工場への人材派遣等)
・両社長は長年の知合いで、買い手社長は売り手の社長の経営方針・人格等に絶対的な信頼を寄せていること
・売り手社長は、早くから経営改善に取り組み(例えば、数年前に退職金規程も廃止、その代わりに決算賞与を支給)、自分の役員報酬も下げて、会社をいい状態にしていたこと
・両社長が婿養子で、立場が似ていたこと
・私の仲介能力が上がったこと(笑)
(譲渡に至る経緯)
売り手社長は婿養子でしたが、奥さんのお父さん(創業者である前社長)が突然倒れられて急遽社長に抜擢されました。ただ、自ら望んで社長になった訳ではなく、他にしたい仕事もあったため、M&A(譲渡)を決断されました。また、まだ40代後半ですが、健康上の理由も大きな要因でした。
株主は、前社長のつながりで20名ほどいたのですが、これらの株主も全員がM&Aに理解を示していただき、スムーズな株式の買い取りができました。
(M&A後)
売り手社長の手腕は、買い手社長に高く評価されていますので、M&A後も売り手社長には取締役会長としてしばらく残っていただき、経理業務を中心に手伝っていただくことになりました。
更に売り手社長は、近々別会社を作り、この会社を通して、買い手グループ企業のIT支援も行うことになりました。
売り手社長(賢明で大胆)と買い手社長(豪快だけど繊細)の人格もすばらしく、私も仲介者冥利に尽きるいい案件で、ハッピーM&Aを提唱する私にとっては、理想的なM&Aでした(*^_^*)